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『赤い蠟燭と人魚』 小川未明 作

『赤い蠟燭と人魚』 小川未明 作_b0340046_10051022.jpg
作 小川未明
絵 酒井駒子
偕成社


《ストーリー》
北方の海に 人魚が棲んでいました。
人魚は、 海底深く魚や獣物たちの棲むところで話し相手もなく暮らしていました。
その人魚は、みもち(妊娠)していました。人魚は、生まれてくる子にこんな悲しい頼りない思いをさせたくないと思っていました。

人間は、この世界の中で一番優しいものだと聞いている。
可哀そうな者や頼りない者は、決していじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている。幸い、ワタシ達は、みんなよく顔が人間に似ているばかりでなく、胴から上は全部人間そのままなのであるから……一度、人間が手に取り上げて育ててくれたら、決して無慈悲に捨てることもあるまい。

人魚はそう思って、生まれてくる子の幸せを願い人間に赤ん坊を託したのでした。
人魚の子を拾った蠟燭屋の老夫婦は、その子を大切に育てます。
人魚の娘は、美しい娘に育ち やがて蠟燭屋の絵付の手伝いをします。娘が赤い絵の具で描いた蠟燭は大層売れました。

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あるとき、南方の国から来た香具師(やし)から、人魚は不吉だと言われ老夫婦は金をもらって娘を売ってしまいます。
売られる前に、娘は蠟燭を赤く塗りそれを自分の悲しい思い出の記念(かたみ)にのこしていきます。その夜、一人の女が赤い蠟燭を買っていきました。
そして、娘が檻に入れられ船で発った夜、海は大嵐となり難破船が多数でます。
それ以来、その赤い蠟燭が山のお宮に灯った晩は船が遭難し、幾年もたたずして、その町は滅びて、無くなってしまいます。


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この小川未明の作品には、いろいろな画家が描いています。
酒井駒子さんの絵も素敵ですが、もう一人の画家 いわさきちひろさんが描かれた絵もご紹介します。

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作 小川未明
絵 いわさきちひろ
童心社


この作品は、未完のまま、いわさきちひろの遺作となりました。
1974年8月8日に亡くなって後、1975年6月に童心社から発行されました。

いわさきちひろは、この作品の焦点を冬の日本海にあててスケッチし、対象をしっかり見据えたいという意思を持って描いていました。
この表紙の娘の絵は、日本海へのスケッチ旅行の直後に描かれたものです。
白い紙に描かれた人魚の娘は、誠に美しく哀く…その清らかな瞳は、寂しげで切なく、見る人に訴えかけてきます。

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人魚の娘のラフスケッチ


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《小川未明》1882〜1961
新潟県上越市に生まれる。本名は健作。
東京専門学校(早稲田大学の前身)哲学科を経て大学部英文科を卒業。
坪内逍遙から文学について多くを学び、またラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の講義に
感銘を受け卒業論文ではハーンを論じた。「未明」の名は、坪内逍遙から与えられた。
79歳で生涯を終えるまで、50年以上に渡って童話や小説、随筆等の作品を書いた。
童話だけでも約1200編にのぼる。

このような、巨匠を前にして一言で紹介はできないが、未明童話の解説者の言葉を借りて云うと、未明の童話は、
静かで淋しい
淋しさのかなたに灯る希望
かなしみのうちに宿るぬくもり

子どもだけでなく、大人の童話でもあり、幅広い年齢層の方に読んでいただきたい作品です。















Commented by nekobokkokoubou at 2015-08-06 17:07
日本のお話って少し、、かわいそうな感じが多いですね。ハッピーエンドじゃなくて、ちょっと怖いのかな?
可愛がって育てたのに、、どうして売っちゃったんだろう??
いわさきちひろさんの絵は、とても清らかで
ちょっとさみしそうな線ですね。お話も絵で全然違って見えます。
Commented at 2015-08-06 17:21
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kei-ok at 2015-08-06 17:47
こんにちは^^
人間の弱さを表した物語だなぁと思いました。
命に代えても惜しくない愛する我が子を託した
母親の哀しみを思うと切なくなります。
少女の眼差し、後姿、心に響いてくるものがあります。
sakomamaさん、図書館で借りてゆっくりページを
めくりながら読んでみようと思います^^
Commented by osozakiusagi at 2015-08-06 18:22
こんにちは。
小川未明いいですよね~私も好きです。
暗くて悲しいお話が多いですが逆に心に残りますね。
酒井駒子さんと、いわさきちひろさんの絵も素敵です。
まさに大人の童話、久々に読んでみようかな(*^_^*)
Commented by jun-go-chan at 2015-08-06 19:26
こんばんは~
小さい頃に読んだイメージと、
大人になってから読んだイメージとは、ちょっと変わりました。
ただ、「かわいそう」というのは共通しているのですが。
小川未明の作品は、これしか知らないのですが、
他のものを読んでみたくなりました。
いわさきちひろさんのもので「赤い蝋燭と人魚」、読んでみたいですね。
Commented by itotohari at 2015-08-06 21:36
このお話し…はじめて知りました。
なんとも哀しいお話しですね…。
赤い蝋燭…なぜ赤だったんどう。。。
赤というと赤い鳥居を連想しちゃう。。。
ふっと人魚と人形って似ている、何か関係あるのかな?
その後の人魚の娘はどうなっちゃったんだろう?
人魚の肉は不老不死の薬と大昔にいわれていましたよね。。。
すいません。こんなことをあれこれ思っちゃいました。
無性に読んでみたくなりました。
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 06:27
★nekobokkoさん☆
そうですね。人間の心代わりが怖いですね!
最初は、香具師に言われても断っていたのが
自分たちに不吉な事が起ると言われて
その言葉を信じてしまった人間の愚かさが出ています。
こうやって、2つを並べて見てみると全然違っていて面白いですね(^_^)
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 06:38
★鍵コメさん2015.8.6.17:21☆
そうですねワタシも、そう思います。
生きずらい世の中になって来ました。
このお話の中で、人魚の姿は子どもの姿を現しています。
真に美しいもの、正しいものは、難しくても言葉を選べば
子どもに理解されると未明は言っています。
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 06:50
★keiさん☆
今いる辛い環境と同じ生き方は、子どもにはさせたくない。
幸せに育ってほしいという親の願いで、人間を信じて託した。人魚の思い…
ゆっくり図書館で読んで見ていただきたい本です(^ ^)
Commented by Meri-koenji at 2015-08-07 07:47
ハッピーちゃんママ、おはようございます‼
待ってました、人魚。懐かしい...たしかにこんなお話でしたね。悲しい運命なのは覚えていましたが、終末を忘れていたのでご紹介くださってありがたいです(^∇^)
新潟に縁のあるお話だそうですね。もともと佐渡島にも似たお話が伝わっているとか、上越には鵜の浜人魚館があるとか。
それでsakomamaママも選んだのかなぁって思いました☆
Commented by funfunniconico at 2015-08-07 11:16
その後、人魚の女の子はどうなったのでしょう。
人魚のお母さんは人間を信じて託したのに、
裏切られてしまったという事かな~。
でもきっと、繁盛していたお店も、人魚の女の子がいなくなり
足を運ぶお客さんの数も減っていったことでしょうねー。

人魚の女の子、難破した船から飛び出して、海での自由を手に入れていたらいいな~。 ^^
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 14:00
★osozakiusagiさん☆
そうですね!小川未明の作品には前期(大正後期)と後期(昭和前期)の
時代の変化があって、主に前期(大正後期)の作品が一般的によく知られているようです。
でも、後期(昭和前期)の作品も惹かれるものが沢山あり…
図書館などで涼みながらゆっくり読んでみるといいと思います(^ ^)
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 14:23
★jun-goちゃん☆
そうなんです。子どもの頃読んだ話と大人になってから読んだ話って
イメージが違ってきているんですよね^ ^
そこが、また面白い。
特に、小川未明の作品は太平洋戦争の頃の社会主義的な影響が
出ていて、それが時代の変化とともに作品にも変化をもたらしている。
いろいろな目で読んでいくと面白いですね(^ ^)
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 14:40
★itotohariさん☆
こんにちはー!
機会がありましたら、一度読み比べしてみるのもイイですよ^ ^
他に堀内誠一が描いた「赤い蠟燭と人魚」もありました。
そして、小川未明の作品には赤が付くのが他にも…
「赤い鳥」を創刊したり
「赤い船」という童話集や
「紅い花」、「赤い睡蓮」、など…まだあるかな?
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 14:54
★メリーママさん☆
こんにちはー!
いろいろよくご存知ですね!そうなんです。せっかく新潟に住んでいるから
新潟出身の作家を探していたら、この本を見つけました^ ^
もう少し小川未明の作品を、読み込んでみたいと思います(^_^)/
Commented by sakomamabook at 2015-08-07 15:08
★きゃふぁにこさん☆
素直な感想ありがとうございます(^ ^)
これを、読み聞かせで読んだら子どもたちも
こういう色んな感想を話してくれるんじゃないかなと思っているんですが
入院している子どもたちなので…どうしようか迷っています。
今回、皆さんにご紹介出来ただけでもよかったかなと思います(^_^)/
Commented by daikatoti at 2015-08-10 08:32
坂井駒子さんの絵、好きです。ちょっとレベルの違う絵です。
うまいですよね。
赤い蠟燭と人魚があるとは知りませんでした。
いわさきちひろさんと比べてみて見るとお勉強になりますよね。
Commented by yokopiyon at 2015-08-10 12:13
初めまして。
「赤い蝋燭と人魚」怖い話ですけど、絵も素敵で全部見てみたくなりますね。
小学生の時にいわさきちひろさんが好きな先生がいて、年度末、頑張ったご褒美に絵をプレゼントしてくれてたかな~優しい先生でした。
ちひろさんの絵はどこか淋しげだけど、好きです。

絵本をみると童心に帰ります。
小さい時に見て印象に残っているのはロシアの絵本が多かったのを大人になってしり、へぇ~と思ったもんです。
今日は久しぶりに絵本を開いてみよ~っと‼
では、(^o^)/~~
Commented by sakomamabook at 2015-08-10 15:10
★totiさん☆
はい!ワタシも好きです。絵のベースに黒を使っているせいか、赤い蠟燭の色など まるで静脈の様な色で、これから先に起こる出来事を暗示しているようです。
全体に、酒井駒子さんは洋風、いわさきちひろさんは、和風の雰囲気で描かれているところが、それぞれの表現の仕方がでているなと思いました。お時間ありましたら是非ご覧下さい。
Commented by sakomamabook at 2015-08-10 15:37
★yokopiyonさん☆
ご訪問ありがとうございます!
子どもの頃の思い出って大切ですね。
それも、優しい先生のお陰で、素敵な思い出になっているんですね。
ワタシも今になって、もっともっと 色んな本を読んでおけばよかったかな。。。と。。。
ロシア(又はロシア人が書いた本)の本は、「てぶくろ」とか「おおきなかぶ」とかetc…
色鮮やかで、暖かい絵本が多いですね。人生、同じ本を三回読むといいますから。。。今度は自分の為に読んでみるのもよいですね(^_−)−☆
Commented by mocorit0125 at 2015-08-10 15:56
悲しいお話ですね、、、。
ストーリーとイラストがとても合っていて引き込まれますね。
怖いぐらい美しいというか、、、。
酒井さんのもいわさきさんのも、それぞれ読んでみたくなりました。
Commented by sakomamabook at 2015-08-10 23:18
★mocoritoさん☆
そうなんです。大人の方にもお薦めです。
この小川未明の「赤い蠟燭と人魚」は、いろいろな画家さんが描かれているので、見比べてみるのも面白いです♪
十数人の方が描かれていました(^-^)/
Commented by chocottie at 2015-08-11 10:30
酒井さんの絵が好きです。この本の絵を描いているの、知りませんでした。ぴったりですね。
Commented by sakomamabook at 2015-08-11 12:16
★chocottieさん☆
こんにちは!
酒井駒子さんの絵がお好きなんですね^ ^
でしたら、もう一冊ご紹介したい絵本が。。。
「くまとやまねこ」作:湯本香樹実 絵:酒井駒子です。
これもちょっと悲しいですが、心が温まるお話です。
機会がありましたら、ご一読ください(^-^)/
Commented by creamally at 2015-08-15 20:19
駒子さんの絵本は何冊か持っていますが、中でも「よるくま」と「ビロードのうさぎ」が大好きです。
ちひろさんの絵、人魚の娘の清楚な美しさと悲しい運命が、ラフスケッチ1枚だけからでも伝わってきますね…
「赤い蝋燭と人魚」、改めて読んでみたいです。
Commented by sakomamabook at 2015-08-16 01:01
★creamallyさん☆
ワタシも「よるくま」の絵本持ってます^ ^やっぱり気に入ったのは手元に置きたいですよね(^_^)
「ビロードのうさぎ」はやはり、いろんな方が読み聞かせで使う人気物です♪

ちひろさんのラフスケッチの中に、海の中の人形も描かれてあったんですが、これもよかったです。機会がありましたら見てみて下さい^ ^
by sakomamabook | 2015-08-06 16:56 | 魅かれた本 | Comments(26)